2008年03月05日

論文紹介 - TREE (2008) vol. 23, issue 1

最近アクセス数も上がり、ちょいとはまじめな記事でも書くかなという気にやっとなりました。

Kotiaho, J.S., LeBas, N.R., Puurtinen, M., and Tomkins, J.L. (2008) "On the Resolution of the lek paradox". Trends in Ecology and Evolution (23)1: 1-3.

Lek paradoxって何?
レックは、有性生殖を行う生物が繁殖を目的に集まる場所。主に繁殖者の空間的・時間的な集中を指し、その決まった場所や期間に mate choice を行ったり、交尾をしたりする。レック自体が繁殖選択以外の資源をもたらしたり、育児の場になることはない(Sutherland, 1996など、しかし『レックの資源性』については多少微妙な意見も)。レック様式で繁殖する代表的な生物はカエル類。(ちなみに私は北米のSpring peeper (Pseudacris crucifer)のレックを観に行ったことがあるが、スゲェー音量でした)

Mate choice とは、生物が意識的に繁殖相手を選択していることを意味する。要は、繁殖相手がランダムではないという考え。性選択の研究では、メスが繁殖相手の選択(female mate choice)が実際起こっているかどうかが近年の論争の焦点になっている(これは実証が非常に難しい)。繁殖相手の選択は、異性の持つ形質がその個体の質やコンディションなどの指標となっている為(形質 = シグナル)、相手の形質を選択することで、子供にその形質(それに伴う質 etc.)を残すという機構が働いているのではないかと言われている。すなわち、繁殖相手を選ぶことによって、自分の子孫のfitnessが上がる『遺伝的利益』をもたらしているのではないかと言われている(『形質が遺伝する』という部分は性選択の大きな仮説)。

Lek paradox は、オスの形質選択をメスが本当にしているならば、オス個体間の形質のばらつきが減少するので、メスが子孫に対する遺伝的利益はなくなる。。。しかし、mate choice は、メスの遺伝的利益が理由となって行われているとされている。。。あれれ?ということです。矛盾の点を整理すると:

A. FMCによりメスは遺伝的利益を得ている
B. FMCはオスの遺伝的ばらつきを減少させるので、遺伝的利益を得られない

という二つの仮説が本矛盾を構成している



Lek paradoxの前提条件の検証が必要
そもそもパラドクスが生じる原因として以下のことが考えられる:

@実はパラドクスの前提条件は根拠がない
Aパラドクスにつながる予測が間違っている(i.e. 仮説Aと仮説B)

@が実証されれば、パラドクスは実在しないことになり、Aが実証されれば、パラドクスが解かれたことになる。また、Aを問う前に、@の前提条件に矛盾がないことを証明しなくてはならない。


パラドクスの前提条件として、3つ挙げられる:

@ Female mate choice (以後 FMC) が実際起こっている
A FMC にはコストがかかっている
B FMC によるメスの直接的利益(e.g. なわばりへのアクセス、子への給餌、nuptial gift など)はない

以上3つがokだとして、予測の検証が初めて可能になるが、ここで気になるのは、どの仮説が棄却されるかによってパラドクスに与える影響が違う。例えば仮説Aが正しいとなると仮説Bは誤っているということになり、パラドクスは解決する。しかし、仮説Bが正しかった場合(FMCが遺伝的ばらつきを減少させてしまう為、遺伝的利益がありえない)、FMCの遺伝的利益がなくなる為、パラドクスは存続する。なので、lek paradoxの解決には、『FMCが与える選択圧は、fitnessの遺伝的ばらつきを枯渇するほど強くない』ということが実証されることが必要なのだ。



FMCが遺伝的ばらつきを枯渇することがないという理由は?
本論文では、近年注目を浴びている3つの仮説を紹介している。

@血縁度の低いオスを好んでいる
  近親交配を避けているので、遺伝的ばらつきは消えない
A突然変異速度の進化
  FMCが突然変異の速度上げているので、遺伝的ばらつきは消えない
B間接的遺伝作用
  母親の育児への貢献や体内作用が子供のコンディションに影響している可能性がある。環境→遺伝子 に与える影響を検証する必要がある



まだまだ解決に至らない進化研究の謎のひとつですが、今後の発展に注目です。




↑と全く関係ないですが、最近笑えた風刺漫画です。
『大学院生』をテーマにしたPHD Comics から(大好き!): 1/21/08 Your Research Interests


posted by T.Olivia at 21:25| Comment(0) | TrackBack(0) | On academics | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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